1.卵子凍結とは(社会的適応)
卵子凍結とは、文字通り卵子を凍結保存しておくことです。
凍結保存した卵子は、将来の妊娠や体外受精の備えとなります。
卵子凍結が求められる要因は、主に2つあります。
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1.医学的適応の卵子凍結
悪性腫瘍(癌)などの治療によって、その後に卵巣機能の低下が予想される場合
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2.社会的適応の卵子凍結
加齢などの要因で卵巣機能の低下をきたすことが予想される場合
どちらの場合でも、将来的な卵巣機能の低下に備えて卵子を凍結します。
凍結した卵子は保存した時の生殖能力を保ったまま長期の保存が可能です。
詳しくは日本産婦人科学会の動画をご覧ください。
当院が保管先として提携している「Grace Bank」では、無料の個別相談を行なっていますので、相談したい方は是非ご活用ください。
2.卵子凍結における妊娠率
凍結保存した卵子を使って妊娠・出産するためには、体外受精が必須です。
凍結した卵子は、融解する必要があります。融解の過程で5~20%の割合で卵子が破損してしまうこともあります。また、融解後、精子と受精すると受精卵(胚)になりますが、その受精卵が良好胚であるとは限りません。良好胚が子宮に着床してはじめて「妊娠」となります。
これらを踏まえ、卵子凍結での妊娠率を見てみましょう。
卵子の生存率とその後の着床率を考えると、なるべく若い年齢で卵子凍結を行い、10個以上、できれば20個以上の未受精卵を凍結保存しておくことが望ましいということがわかります。
凍結卵子を融解した時の卵子生存の確率
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融解後の卵子生存の確率
80%~95%
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その後、精子を注入した場合の受精率
60%~80%
卵子10個あたりで妊娠できる確率
未受精卵融解後に、卵子が生存・受精し、質が良好な受精卵が確保できた場合の「採卵時の年齢」と「採卵率」の表したグラフです。

3.卵子凍結の流れ
排卵誘発を開始してから、採卵までの期間を採卵周期といいます。
- step0
- 事前にGrace Bankの登録をお願いします。登録はこちらから。
- step1
- 当院の「社会的卵子凍結保存」のご予約をお取りください。必要な検査を1~2か月の間に行い、スケジュールの確認をします。
- step2
- 採卵周期には、月経開始1~3日以内でご来院いただき、ホルモン検査、超音波検査を行い「排卵誘発」を開始します。
- step3
- 月経開始から7~12日目の間で2~3回ご来院いただき、ホルモン検査・超音波検査を実施し、採卵日を決定します。
- step4
- 月経開始から12~16日目ごろが採卵の時期の目安となります。採卵後、卵子の状態を確認し、凍結を行います。
初診から採卵までのスケジュール(採卵まで4~6回通院が必要です。)
左右にスクロールしてご覧ください。

採卵日当日の流れ
- 採卵日は午前中(8:45~9:00)の受診となります。静脈麻酔を使用した場合は、お帰りの際ご家族の送迎が必要です。
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点滴などの準備をしてから、採卵手術に入ります。所要時間は約10分です。
(発育した卵胞数が2個以下の場合には、排卵の有無を確認します。排卵してしまっている場合や、卵子の成長が止まってしまった場合は、中止になる場合があります。) - 手術後、静脈麻酔を使用した場合は、回復室で2時間程度お休みいただきます。帰宅後は自宅で安静にお過ごしください。局所麻酔で採卵をした場合は、その後1時間程度でご帰宅いただけます。お仕事に行くことも可能ですが、なるべく安静にお過ごしください。どちらの場合でも、帰宅前に採卵結果をご説明いたします。
4.卵子凍結の保管方法
当院は凍結卵子の保管先として卵子凍結保管サービス「Grace Bank」と提携しています。
(HP:https://gracebank.jp/about/)
凍結卵子は長期保管が見込まれるため、医師の急病などでクリニックが閉鎖してしまった場合でも、凍結卵子はGrace Bankで保管されており、慌てて転院先をさがしていただく必要がありません。
また、転居に伴い当院への通院が難しい場合でも、Grace Bankと提携している全国のクリニックへの凍結卵子の移送が可能です。
Grace Bankの利用は事前に会員登録が必要です。こちらから登録をお願いします。
Grace Bankはさい帯血保管を行うステムセル研究所にあり、ステムセルの保管システムは24年間無事故を誇り、最新のモニタリング機器と厳重なセキュリティ設備で患者様の大切な卵子をお預かりします。
将来、凍結した卵子を使って体外受精をする際は全国にある提携クリニックにて凍結卵子を利用した不妊治療を受けることができます。

Grace Bankの特徴
- 液体窒素の自動供給システム
- 24時間対応の監視・記録・緊急時体制
- 突然の地震や津波にも強いエリア
- 最も高いレベルの建築物耐震基準クリア
- ALSOK社による24時間警備体制

5.卵子凍結のリスク・副作用
排卵誘発剤による副作用
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)といい、腹痛や腹部の膨満感の症状があげられます。ですが、排卵誘発剤の効果には個人差があるため、卵巣が腫れてしまう方もまれにいらっしゃいます。その場合は、数日間の自宅安静が必要となります。入院を要するような重度の副作用が発生するケースは全体の1%以下です。
採卵による副作用
下腹部の痛みや、出血などの症状が出る場合があります。採卵は基本的には安全な手技ですが、経腟超音波ガイド下にて卵巣を穿刺するため、極めてまれに腸や膀胱などの臓器損傷を起こす可能性が報告されています。また、骨盤内での細菌感染がおこるのに備えて、内服の抗生剤を処方しています。
6.卵子凍結の費用

- 融解後の顕微授精、胚移植は別途料⾦がかかります。
- 上記合計は排卵誘発剤の内容によって誤差がでるため、概算でお伝えしています。
料金はすべて税込みです。
必須検査¥33,000~
+オプション検査
- 初診時に、採卵まで行う検査の打ち合わせを行います。
左右にスクロールしてご覧ください。
必須検査 | 内診・経腟超音波検査 | ¥33,000~ 診察費込み |
子宮や卵巣に腫瘍等の所見はないか |
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クラミジア抗体検査 | 流早産の原因となる性感染症はないか | ||
ホルモン基礎値(FSH LH E2) 甲状腺プロラクチンテストステロン |
不妊症や流産の原因となるホルモン異常がないか | ||
AMH(抗ミュラー菅ホルモン) | 卵巣予備機能が十分にあるか | ||
感染症検査 | 他者や赤ちゃんに移行する感染症がないか | ||
出血・凝固系検査 | 出血があったときに止血する機能がきちんと働くかどうか |
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オプション検査 | 全身の基礎機能(肝機能,腎機能等) | ¥3,300~ | 肝臓、腎臓などの働きを見る |
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貧血検査 | ¥2,200~ | 貧血の有無を見る | |
子宮頸がん検査※ | ¥6,600~ | 子宮がんの基本検査 ※生理出血中には受検できません |
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子宮頸がん検査にHPVを加える※ | ¥11,000~ |
子宮がん検診は自治体の検診事業で行うことができます。ハガキをお持ちでしたらご持参ください。
診察+排卵誘発にかかる費用
¥100,000~¥300,000
- 当院で行う標準的な体外受精治療(自費)と同じです。
- 上記合計は排卵誘発の内容によって誤差がでるため、概算でお伝えしています。
採卵費用
- 得た卵子の個数で変動します。
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卵子数 | 採卵費用 | 費用内訳 |
---|---|---|
0個のとき | ¥53,200~ | = 採卵術¥35,200~ + 採卵材料¥18,000~ |
1~3個のとき | ¥79,600~ | + ¥26,400~ |
4~6個のとき | ¥92,800~ | + ¥39,600~ |
7~9個のとき | ¥113,700~ | + ¥60,500~ |
10~14個のとき | ¥132,400~ | + ¥79,200~ |
15個以上のとき | ¥153,000~ | + ¥99,800~ |
凍結費用
- 採卵で得たなかで、状態の良い卵子を選んで凍結保存します。
- 凍結する卵子の個数によって凍結費用は変動します。
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卵子数 | 凍結費用 | 費用内訳 |
---|---|---|
1~3個のとき | ¥33,000~ | 保存容器1本 + Grace Bank移送までの凍結保存料 |
4~6個のとき | ¥66,000~ | 保存容器2本 + Grace Bank移送までの凍結保存料 |
7~9個のとき | ¥99,000~ | 保存容器3本 + Grace Bank移送までの凍結保存料 |
10~14個のとき | ¥132,000~ | 保存容器4本 + Grace Bank移送までの凍結保存料 |
15個以上のとき | ¥165,000~ | 保存容器5本 + Grace Bank移送までの凍結保存料 |
Grace Bankでの卵子凍結個数は、1ケーン(15個)単位での料金となります。
詳細はこちらをご確認ください。(URL:https://gracebank.jp/price/)
7.よくあるご質問
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Q. 卵子凍結をするために何回くらい通院が必要ですか?
事前検査、排卵誘発、ホルモン検査と超音波検査、採卵の、最短4回のご来院となります。
詳しくは「卵子凍結の流れ」をご覧ください。 -
Q. 仕事をしながらでも卵子凍結は可能ですか?
卵子凍結をされる方の多くが、お仕事を続けながら進められています。
詳細なスケジュールは患者様によって異なりますので、まずは当院へご相談ください。 -
Q. 卵子をいくつ凍結しておく必要がありますか?
未受精卵は10個以上、できれば20個以上を凍結保存しておくのが望ましいですが、ご不安やご質問がありましたら、まずはお気軽にご相談ください。
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Q. 現在のパートナーとの妊娠を将来的に考えている場合は?
現在のパートナーとのお子様を将来ご希望の方は、卵子凍結ではなく受精卵凍結の方が妊娠の可能性が高くなります。まずは当院へご相談ください。