月経周期と診療
不妊症の検査・治療はどのタイミングでも行えるわけではありません。月経3~6日目、月経開始8~11日目、排卵期、着床期のポイントで診療をすすめていくようになります。
自分が今どういう状態にあり、次はどういう時期で受診になるのか、妊娠への可能性を高めていくためにも十分な理解が必要です。
月経3~6日目
【1】経腟超音波検査
月経中にはこの検査は必要な場合にかぎり行っています。
【2】内分泌検査(血液検査)
卵をコントロールする臓器(視床下部、下垂体、卵巣)の機能を評価するホルモン検査です。
【3】前周期の見直し及びその周期の方針
前周期の問題点を検討し、行っていない検査のプランをたてたり、新たな治療プランを提案します。
月経8~11日目
卵管疎通性検査として、子宮卵管造影検査や卵管通気検査を行います。
排卵期
排卵時期の予測を立てることが、検査・治療の中心となります。
【1】経腟超音波検査
卵巣に排卵する卵子を含む卵胞があり、大きさ、数がどの程度かを調べます。
*排卵期の発育卵胞
*卵胞は排卵の時期には直径20㎜くらいでパーンと張りつめた円形になります。
*排卵期の子宮内膜の変化
*内膜は肥厚し木の葉状に見えて内膜の厚さは8㎜以上あるのが理想的です。
【2】頸管粘液検査
排卵日頃の子宮の入り口は頸管粘液と呼ばれる水様透明な液体で満たされ、この粘液の中を精子は子宮腔の中に進入します。この粘液の性状(量や伸び具合)を調べます。超音波検査の時に一緒に行うことができます。
【3】内分泌検査(血液検査)
超音波で排卵日を予測すると同時に血液中のE2(卵胞ホルモン)の値を調べると卵の成熟度が分かります。
E2(卵胞ホルモン):卵胞の成熟度を評価します。卵胞1ケあたり200pg/ml以上あれば成熟卵胞と判断しています。
LH(黄体化ホルモン):卵胞が十分に成熟した時に、下垂体から多量に放出されるホルモンです。このLHの変化のピークから36~48時間後に排卵がおこります。
排卵後5~7日目(着床期)
着床期には基礎体温表では恒温槽になっていますが、この状態を作っているのが黄体(排卵後の卵巣)の働きです。黄体機能を評価することがこの時期の検査の目的です。
【1】経腟超音波検査
宮内膜の状態を観察、また、排卵がきちんと起こったかも確認します。
- 排卵後の卵巣の変化
- 排卵した卵胞は黄体に変化し、超音波検査上では卵巣内が白く濁って見えたり、卵巣内に何も見えない状態になったりします。
- 黄体期の子宮内膜の変化
- 宮内膜はさらに厚くなり、内膜の部分が白く塊状に見えます。内膜の厚さは10㎜以上が望ましく、8㎜以上が妊娠成立には必要とされています。
【2】内分泌検査(血液検査)
排卵後の卵巣は黄体という状態に変化します。この変化によりP(プロゲステロン:黄体ホルモン)とE2(卵胞ホルモン)を産生し、子宮内膜の条件を整え妊娠成立への働きを果たしていきます。
採血を行い、PとE2の値を測定し、評価します。